呼吸器内科医への道

呼吸器内科医を目指す研修医のブログです。勉強したこと、日々の出来事について更新していきます。誤記載などありましたら修正していただけると嬉しいです。

胸水について

先日、久しぶりに胸腔穿刺をして自分で検査のオーダーをしたので、胸水について簡単にまとめます。

 

●問診

急性/慢性の経過 症状の有無(咳嗽、呼吸困難など)、喫煙歴、職種、塵粉曝露歴

 

●滲出性/漏出性

滲出性の場合は感染症や悪性腫瘍、膠原病、医原性などの様々な原因があり、精査が必要。漏出性の場合は膠質浸透圧の低下や毛細血管の静水圧上昇が原因となり、心不全ネフローゼ症候群の場合で起こる。薬剤でコントロールがつくのは漏出性。

 

・Lightの基準

胸水 TP/血清 TP>0.5, 胸水 LDH/血清 LDH>0.6, 胸水 LDH>血清 LDH の上限値の 2/3、いずれかを満たせば滲出性):感度 97%、特異度 85%

 

1: Two-test rule いずれかを満たせば滲出性

・胸水コレステロール>45 mg/dL

・胸水 LDH>血清 LDH 上限値の 45%

2: Three-test rule いずれかを満たせば滲出性

・胸水 TP>2.9 g/dL

・胸水コレステロール>45 mg/dL

・胸水 LDH>血清 LDH 上限値の 45%

 

Two-test ruleもThree-test ruleも感度・特異度共にLightの基準より落ちる

 

●胸水でRoutineに検査する項目

細胞数(分画)、pH、蛋白、LDH、糖

※その他病態にあわせて追加する項目

アミラーゼ、コレステロール、トリグリセリド、BNPクレアチニン、ADA、グラム染色、抗酸菌染色、細胞診、腫瘍マーカーヒアルロン酸

 

Up to dateでは上記のように記載されていますが、自分で胸水検体を提出するときは、Routineの項目に追加して、ADA、細胞診とグラム染色・抗酸菌染色は一緒に提出しています。BNP心不全のbiomarkerになるようですが、測ったことはありません…。

 

胸水中のクレアチニンはUrinothorax(尿路閉塞により)の鑑別に有用で、胸水/血清クレアチニン比>1であれば、Urinothoraxの診断に役立ちます。他にはpH低値や尿臭がする、なども有用。

Urinothorax自体、1985年に本邦で初めて報告された大変珍しい病気なので見る機会は少ないのかもしれません。

  

●細胞診

・1回の感度は60%程度、2回行うことで感度は15%程度上昇する

http://Investigation of a unilateral pleural effusion in adults: British Thoracic Society Pleural Disease Guideline 2010.

・感度は癌の組織型によっても異なる。肺癌では、腺癌78%、小細胞癌53%、扁平上皮癌25%