systematic review:Urinothorax JTD
Urinothoraxのreviewが2017年5月のJournal Of Thoracic Diseaseに掲載されていたので、簡単にまとめてみます。片側胸水が特徴ですが、両側性の場合もあるみたいです。胸水クレアチニン値はかなり役立ちそうです。
Introduction:
Urinothoraxは1954年にFranceとBeckによって最初に症例報告され、2006年までにわずか58例のみ報告されているだけである。今までに大規模なcase studyはないため、systematic reviewにより、臨床的特徴や胸水の性状、managementについて調査した。
Methods:
urinothorax or urothoraxで検索したonline databaseの中で、英語・フランス語・ポルトガル語・スペイン語で書かれているもの。また、online以外にも出版されたarticleの中で検索できたものも含めて調査した。
Results:
88人の症例数があり、平均年齢は45歳(range,0-84歳)で男性の方が女性よりも多い傾向にあった(54/34; 61.4% ratio 1.6)。臨床症状で多かったのは呼吸困難(92.8%)
胸痛(76.9%)、腹痛(91.4%)であった。
Urothoraxの原因で最も多いのはtraumatic origin(76%)で、2番目は尿路閉塞によるもの(24%)であった。
胸水は74人(87%)で見られ、ほとんどが片側性であり、右側胸水が31人(58.1%)、左側胸水(41.9%)であった。両側胸水は11症例で認められた。
胸水/血清クレアチニン比は、ほぼ全ての症例で>1であり、1未満だったのはわずか1例だった。
Discussion;
Urothoraxは非常に稀な疾患であるが、発症する原理は様々な議論がある。一つの要因として横隔膜の裂孔から直接的に流入するという説があるが、現在は後腹膜の圧力が上昇することによって横隔膜のリンパ路を通して尿が漏れるという説が有力である。
どんな年齢層にも出現するが、男性により有意に起きやすいこと、またtraumaticな原因が多いことがわかった。
治療法はいまだ確立されておらず、外科的手術をしても再発することがある。
今回の研究では、care reportが多数含まれているため、研究のqualityが担保されていない可能性がある。また、症例数が少ないというlimitationもある。
胸水について
先日、久しぶりに胸腔穿刺をして自分で検査のオーダーをしたので、胸水について簡単にまとめます。
●問診
急性/慢性の経過 症状の有無(咳嗽、呼吸困難など)、喫煙歴、職種、塵粉曝露歴
●滲出性/漏出性
滲出性の場合は感染症や悪性腫瘍、膠原病、医原性などの様々な原因があり、精査が必要。漏出性の場合は膠質浸透圧の低下や毛細血管の静水圧上昇が原因となり、心不全やネフローゼ症候群の場合で起こる。薬剤でコントロールがつくのは漏出性。
・Lightの基準
胸水 TP/血清 TP>0.5, 胸水 LDH/血清 LDH>0.6, 胸水 LDH>血清 LDH の上限値の 2/3、いずれかを満たせば滲出性):感度 97%、特異度 85%
1: Two-test rule いずれかを満たせば滲出性
・胸水コレステロール>45 mg/dL
2: Three-test rule いずれかを満たせば滲出性
・胸水 TP>2.9 g/dL
・胸水コレステロール>45 mg/dL
Two-test ruleもThree-test ruleも感度・特異度共にLightの基準より落ちる
●胸水でRoutineに検査する項目
細胞数(分画)、pH、蛋白、LDH、糖
※その他病態にあわせて追加する項目
アミラーゼ、コレステロール、トリグリセリド、BNP、クレアチニン、ADA、グラム染色、抗酸菌染色、細胞診、腫瘍マーカー、ヒアルロン酸
Up to dateでは上記のように記載されていますが、自分で胸水検体を提出するときは、Routineの項目に追加して、ADA、細胞診とグラム染色・抗酸菌染色は一緒に提出しています。BNPは心不全のbiomarkerになるようですが、測ったことはありません…。
胸水中のクレアチニンはUrinothorax(尿路閉塞により)の鑑別に有用で、胸水/血清クレアチニン比>1であれば、Urinothoraxの診断に役立ちます。他にはpH低値や尿臭がする、なども有用。
Urinothorax自体、1985年に本邦で初めて報告された大変珍しい病気なので見る機会は少ないのかもしれません。
●細胞診
・1回の感度は60%程度、2回行うことで感度は15%程度上昇する
・感度は癌の組織型によっても異なる。肺癌では、腺癌78%、小細胞癌53%、扁平上皮癌25%