結核の基礎レクチャー
お疲れ様です。呼吸器内科医を目指す研修医のReiです。
研修医生活も終わりにさしかかっていますが本日は結核について、研修医同士のレクチャーをやりました。結核は奥深くて好きなのですが、なかなか症例には出会えておりません涙
◆結核とは
・結核菌は抗酸菌属であり、臨床上問題になるのはヒト型結核菌(いわゆるM. tuberculosis)とウシ型結核菌(M.bovis ※これを弱毒化したのがBCG)
・偏性好気性菌で、発育至適温度=37℃(つまりヒトの肺に生息しやすい)
・自然歴は最初に結核に暴露されたうちの5%が一時結核として発病(所属リンパ節に病巣を作る=Cohn complex)暴露されたうちの95%が休眠期間に入り、そのうちの10%-20%が二次結核として発病(多くが肺結核)。
◆最近の動向と疫学
・日本では1950年以降、結核患者数は一貫して減少しており、2014年以降の新登録結核患者数は年間2万人を下回る。しかし、欧米の先進国と比較すると依然として患者数は3倍〜5倍程度。
・結核発病者数は2000人/年。
・死亡数は2000人/年で減少傾向、日本人の死因の29位(2015年時点)。
・小児(14歳以下)の結核発病者数は50人/年。
・最近では外国人出生者の新登録患者数が増加傾向であり、発病の多くが若年層。多くが母国で感染しているので、耐性菌リスクが高い。外国人の結核症例では軽症でも安易に抗結核療法を導入してはダメ。専門医に紹介する。
・2015年では多剤耐性肺結核の患者数は48人/年で、世界的に見れば耐性菌の割合は非常に少ない。
◆どのような患者に検査をするか
・Risk factor
ステロイド、HIV感染、免疫抑制剤使用、維持透析中、珪肺、高齢者、糖尿病、妊娠、悪性リンパ種、低栄養、胃切除後
・慢性咳嗽がある(8週間以上)
・典型的な症状がある(寝汗、倦怠感、微熱、体重減少)
・血痰がある(一番多い血痰の原因は気管支拡張症です)
・高齢者の肺炎
・high risk patientの肺炎
・画像で典型的な肺炎で説明できない異常がある(空洞影)
・1週間の経過で改善しないCAP
・結核が頭をよぎった時
◆どうやって検査をするか
・喀痰検査:早朝喀痰を含めて8時間以上あけて3回連続で採取する
※胃液でも良い(その場合は早朝)
塗抹:感度31~80% 特異度93~100%
PCR(1〜2日間):感度83% 特異度99%
培養(2〜3週間):感度82% 特異度96%
◆標準治療
基本的な考え方は「感受性のある薬剤を2剤以上使用し、確実に内服させ一定期間の定められた治療を行う」こと。
・Key drugはRFPとPZA
・INH/RFP/PZA/EB or SM 2ヶ月 その後 RFP/INH 4ヶ月 など
・治療期間の延長が必要な場合
①再治療例 ②粟粒結核/結核性髄膜炎 ③菌陰性化遅延 ④HIV感染例
◆LTBI(潜在性肺結核)
・定義は「明らかな臨床症状なく、細菌学的検査や画像検査で活動性結核の所見がなく、結核菌を潜在的に保有している」こと
・検査はQFTかT-spot
・免疫抑制状態の患者では、IGRAの陽性率は低下するため免疫抑制薬導入前に測定する
・治療:INH6ヶ月—9ヶ月 or RFP4ヶ月—6ヶ月
・HIV/AIDS、透析、移植患者、生物学的製剤使用患者などでは治療を検討する。(専門医にコンサルと。その場合はCTと痰の採取をできれば)
・LTBIの治療により、将来的な発病リスクが1/3程度に減少し、その効果が10年以上継続する。