呼吸器内科医への道

呼吸器内科医を目指す研修医のブログです。勉強したこと、日々の出来事について更新していきます。誤記載などありましたら修正していただけると嬉しいです。

お久しぶりです。

2ヶ月ぶりの投稿になります。

ついに呼吸器内科を目指す後期研修医になりました。2月、3月となかなかブログの記事を書く時間を見つけられず更新できませんでした。

ここから再度また更新を続けられればと思っています。

 

今回は呼吸器内科の本で私が最近購入した本をご紹介します。

3月に倉原先生の「ポケット呼吸器診療2018」がついに発売されました。

私が初めてポケット呼吸器診療を見たのはまだ医学生の時でした。その時は講義をしてくださった先生が「オススメの本で学会でも紹介されていたよ」と言われて渡してくださったのが最初だったと思います。

学生の実習中も網羅的に疾患が記載されており、かつポケットに入って持ち運べるサイズということで重宝していました。

今回2018年度版にアップデートされていたので再度購入。大幅な改訂で細かいところまで手がとどく仕様に成っており、呼吸器内科を研修する研修医の先生にぜひオススメしたいと思っています。

 

来年度の改訂も楽しみですね。

私もこれから呼吸器内科の専門医を目指して頑張ろうと思います。

今年度もどうぞよろしくお願いいたします。

 

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呼吸器内科研修のおすすめ本①

こんにちは!!研修医のReiです。

1月も終わりですね。

医学生の皆さんはそろそろ国家試験が近づいてきているのではないでしょうか?

 

今回は初期研修医になった時に、呼吸器内科研修で役に立つ参考書を紹介します。

 

新胸部画像診断の勘ドコロ 高橋雅士先生

胸部画像の本ならこれです!読破すれば胸部画像について肺の構造を理解しながら読めるようになります。私が放射線科ローテ中に重宝しました、もっと早く読めばよかったと思っていた本です。

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亀田流驚くほどよくわかる呼吸器診療マニュアル 青島正大先生

亀田総合病院の呼吸器内科の先生方が書かれている本です。呼吸器の疾患について大まかな治療内容を知りたければこれを読むと網羅的に理解できます。

これを読めば、標準的な治療は身につくと思います。分かりやすいです。

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ポケット呼吸器診療2017 倉原優先生

すごくおすすめの本です!この本を常にポケットに入れておけば「これなんだっけ?」という疑問に答えてくれます。私が持っているのは前の版ですが、今でもちょこちょこと病棟でお世話になっています。

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Dr.竜馬の病態で考える人工呼吸器管理 田中竜馬先生

人工呼吸器に興味がある初期研修医の先生は必ず読んでいるのではないでしょうか。

竜馬先生がわかりにくい、理解できないと思いがちな人工呼吸器の仕組みを実に分かりやすく解説してくれます。何回も繰り返し繰り返し読み込むことで、人工呼吸器管理への不安が解消されます。読破できるほどよいページ数です。

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今回は第一弾ですが、まだまだおすすめの本があるので次の機会に紹介しますね。

6年生の皆さんは是非国試に向けて頑張ってください!!

IPF患者の呼吸機能と大気汚染

お疲れ様です。研修医のReiです。

しばらく当直で記事が書けていませんでした。日曜日の救急外来の勢いはすごいですね。救急外来では緊急度に合わせてトリアージされ、重傷な人ほど優先されるので、待ち時間は平日外来より長いかもしれません。(知らない方が多いです)

 

今年はすでにインフルエンザBが流行しており、AとBの混合感染の方もいらっしゃいました。インフルエンザで頻回に処方をもらいに救急外来に来院される方が本当に本当に多いので、、泣。感染症コンサルタントの岸田先生の記事を見つけたので貼っておきます。

toyokeizai.net

 

本日はIPF患者の肺機能と大気汚染の関連についての論文を読んでみました。

http://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(18)30092-8/fulltext

Air Pollution Exposure Is Associated with Lower Lung Function, but not Changes in Lung Function, in Patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis

【背景】

IPFにおいて、大気汚染はIPF急性増悪や病勢の進行や死亡率に関連すると言われている。本研究ではIPF患者の呼吸機能検査に大気汚染への曝露がどれほど影響を与えているか調査したものである。

 

【方法】

Carifornia大学でIPFと診断された患者でまだIPFに対して薬物加療を受けていない群。それぞれ自宅でスパイロメーターを使用し調査開始から40週までの呼吸機能検査を調査した。自宅内で過ごした時間と外出した時間も調査し、週毎にその地域のオゾン(03)、NO2、PM2.5、PM10の数値を測定した。

【結果】

25人が本研究に組み込まれ、平均年齢は73.6歳で84%が男性。32%が非喫煙者であった。PM10への強い曝露歴は予測FVC%の低下と関連する(95%CI -0.73, -0,13 p<0.005)。予測FVC%の低下はNO2(95%CI -0.85, -0.05 p=0.03)、PM2.5(95%CI -0.84 p-0.02)、PM10(95%CI -0.92 p=0.003)の平均値とある程度相関が見られた。しかしFVCの週毎の変化と40週以上の変化は汚染物質への曝露とは無関係であった。

【結論】

汚染物質へ大量に曝露すると呼吸機能低下に関連するが、IPF患者においては呼吸機能は低下させない。

 
 

結核の基礎レクチャー

お疲れ様です。呼吸器内科医を目指す研修医のReiです。

研修医生活も終わりにさしかかっていますが本日は結核について、研修医同士のレクチャーをやりました。結核は奥深くて好きなのですが、なかなか症例には出会えておりません涙

 

結核とは

結核菌は抗酸菌属であり、臨床上問題になるのはヒト型結核菌(いわゆるM. tuberculosis)とウシ型結核菌(M.bovis ※これを弱毒化したのがBCG)

偏性好気性菌で、発育至適温度=37℃(つまりヒトの肺に生息しやすい)

・自然歴は最初に結核に暴露されたうちの5%が一時結核として発病(所属リンパ節に病巣を作る=Cohn complex)暴露されたうちの95%が休眠期間に入り、そのうちの10%-20%が二次結核として発病(多くが肺結核)。

 

◆最近の動向と疫学

・日本では1950年以降、結核患者数は一貫して減少しており、2014年以降の新登録結核患者数は年間2万人を下回る。しかし、欧米の先進国と比較すると依然として患者数は3倍〜5倍程度。

結核発病者数は2000人/年。

・死亡数は2000人/年で減少傾向、日本人の死因の29位(2015年時点)。

・小児(14歳以下)の結核発病者数は50人/年。

・最近では外国人出生者の新登録患者数が増加傾向であり、発病の多くが若年層。多くが母国で感染しているので、耐性菌リスクが高い。外国人の結核症例では軽症でも安易に抗結核療法を導入してはダメ。専門医に紹介する。

・2015年では多剤耐性肺結核の患者数は48人/年で、世界的に見れば耐性菌の割合は非常に少ない。

 

◆どのような患者に検査をするか

・Risk factor

ステロイドHIV感染、免疫抑制剤使用、維持透析中、珪肺、高齢者、糖尿病、妊娠、悪性リンパ種、低栄養、胃切除後

 

・慢性咳嗽がある(8週間以上)

・典型的な症状がある(寝汗、倦怠感、微熱、体重減少)

・血痰がある(一番多い血痰の原因は気管支拡張症です)

高齢者の肺炎

・high risk patientの肺炎

・画像で典型的な肺炎で説明できない異常がある(空洞影)

・1週間の経過で改善しないCAP

結核が頭をよぎった時

 

◆どうやって検査をするか

・喀痰検査:早朝喀痰を含めて8時間以上あけて3回連続で採取する

※胃液でも良い(その場合は早朝)

塗抹:感度31~80% 特異度93~100%

PCR(1〜2日間):感度83% 特異度99%

培養(2〜3週間):感度82% 特異度96%

 

◆標準治療

基本的な考え方は「感受性のある薬剤を2剤以上使用し、確実に内服させ一定期間の定められた治療を行う」こと。

・Key drugはRFPPZA

・INH/RFP/PZA/EB or SM  2ヶ月 その後 RFP/INH 4ヶ月 など

・治療期間の延長が必要な場合

①再治療例 ②粟粒結核/結核髄膜炎 ③菌陰性化遅延 ④HIV感染例

 

◆LTBI(潜在性肺結核

・定義は「明らかな臨床症状なく、細菌学的検査や画像検査で活動性結核の所見がなく、結核菌を潜在的保有している」こと

・検査はQFTかT-spot

・免疫抑制状態の患者では、IGRAの陽性率は低下するため免疫抑制薬導入前に測定する

・治療:INH6ヶ月—9ヶ月 or RFP4ヶ月—6ヶ月

HIV/AIDS、透析、移植患者、生物学的製剤使用患者などでは治療を検討する。(専門医にコンサルと。その場合はCTと痰の採取をできれば)

・LTBIの治療により、将来的な発病リスクが1/3程度に減少し、その効果が10年以上継続する。

好酸球型のCOPDでメポリズマブ(ヌーカラ®)は効果があるのか? NEJM

Mepolizumab for Eosinophilic Chronic Obstructive Pulmonary Disease

メポリズマブ(ヌーカラ®)は重症喘息に対して現在適応のある抗IL-5モノクローナル抗体であり、アメリカでは気管支喘息、ABPAに対して既に適応がある。

 

今回好酸球型のCOPDに対してMETREX試験とMETREO試験という2つの試験の解析が出たため、その結果を検討する。

 

METREX試験では血中好酸球数により836人をメポリズマブと投与する群と投与しない群の2群に無作為に割り付け、メポリズマブ群とプラセボ群で年間のCOPD増悪の発生率を比較している。結果は、メポリズマブ群で有意に年間の中等度〜重度の増悪発生率が低下したという結果だった。

 

METREO試験では血中好酸球が高い好酸球型のCOPDの患者群で、メポリズマブ300mg投与群とメポリズマブ100mg投与群、またプラセボ群に無作為に割り付けて検討した試験。その結果、メポリズマブとプラセボ群ではメポリズマブ群で増悪発生率は低下したが統計学的な有意差は出なかった。

 

2つの試験解析結果では、血中好酸球数>300では、年間の増悪傾向がプラセボ群に比較してメポリズマブ群で有意に低い結果が出た。

 

今後,好酸球型のCOPDの重症症例に対して適応になってくるでしょう。

 

また、今回の試験によってもともと好中球性の炎症と思われていたCOPDですが、好酸球による気道炎症もあることが裏付けされました。

 

 

気管支拡張症のスコア

あっという間に月曜日です。

今週の英語のカンファレンスでは、42歳男性の右背部痛の症例でした。結局、最終診断は当初出ていた鑑別疾患には入っていたのですが、なかなか救急外来で診断をclearにつけるというのは難しいですね。

 

本日はCHESTから、気管支拡張症のCTのスコアリングについてです。

The BRICS (Bronchiectasis Radiologically Indexed CT Score) 

A Multicenter Study Score for Use in Idiopathic and Postinfective Bronchiectasis

http://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(17)33213-0/fulltext

 

●気管支拡張症について

・慢性炎症によって、太い気管支が拡張され、破壊されていく疾患。原因疾患は様々あるが、Up to dateには下記のように記載されている。

・腫瘍やRAなどによるもので合併した続発性の場合と嚢胞性線維症やIgG/IgA欠乏症、好中球遊走能の低下などの先天性の場合がある。

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・外来では、IgGやIgAなどの免疫グロブリン電気泳動でCVID(分類不能形免疫不全症)を検討することもある。他、ABPAが疑われる症例では、アスペルギルス沈降抗体も提出。嚢胞性線維症を疑うのであればCFTR遺伝子を調べる。

 

・最大の問題点は、慢性炎症と低酸素血症により気管支に新生血管が出現し、大量喀血で窒息の可能性があること。

・また、気管支拡張症の患者は気管支に菌が定着する場合が多く(頻度の高い病原体には,インフルエンザ菌(35%),緑膿菌(31%),Moraxella catarrhalis(20%),黄色ブドウ球菌(14%),肺炎球菌(13%))、何の菌が定着しているか確認する必要がある。

・現在の医療では完治する病気ではない。The European Respiratory Societyのガイドラインでは、成人で急性増悪を繰り返していて、緑膿菌感染を繰り返している場合では、吸入の(?)抗緑膿菌薬で対応しても良い。緑膿菌以外で慢性炎症を呈している場合は長期マクロライドを使用する。

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本題

Background)

気管支拡張症については、1991年にBhallaらが嚢胞性線維症(以下CF)の患者を対象としてCTによる増悪のseverityをスコア化した。その後ReiffによるReiff scoreやBronchiectasis severity indexなどのscoreが使用されていたが、どれも喫煙の程度や気管支拡張症の程度に関しては一貫せず、より精度の高いscoreが検討されていた。今回は特発性/感染後の気管支拡張症患者で喫煙歴はある程度絞った群における、CTでの気管支拡張のseverityを評価した。

 

Methods)

2006年から2013年の間でのUKのthe Royal Infirmary of Edinburghでのcohort study。対象患者は初診時にthin-sliceの胸部CTを施行。臨床的なparameterは、膿性痰の有無、急性増悪での入院歴、抗菌薬の投与が必要だったか。また、好中球エラスターゼは痰が喀出され測定できる場合に測定した。

 

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Results)

Bhalla scoreは優位に%EFV1、喀痰、病院の入院率と相関した。

好中球エラスターゼは優位にCTで肺気腫が認められた群で高値であった。

HIV感染症に結核が合併している時の治療は?

日曜日も終わりますね。おやすみは短いです。

先週末から救急当直でなかなか更新ができず...毎日更新するのを目標にしていたので悔しいです。最近はどこの医療期間もインフルエンザが院内で蔓延していて、近隣の病院は満床のようで...。先週は胆管炎の患者さんを100km近く離れた病院まで同乗して搬送してきました。

 

土日はHIVセミナーでお勉強。

HIV感染症はまだ外来や入院で症例を見たことはないのですが、呼吸器内科で見ることはあると思うので、しっかり勉強していきたいです。東京オリンピックもあるので、知識を持った医師の需要は高まりそうです。(HIV感染症の治療ガイドラインは頻繁に変わるので、ついていくのが大変です)

 

今回はART治療を開始していないHIV感染症の患者の結核合併例ではどのような治療がされるのか、まとめてみました。(HIV感染症「治療の手引き」より抜粋)

 

HIV感染と結核は相互に悪影響を及ぼし、特にHIV感染により、潜伏結核が活動性結核に進行するリスクは約100倍!である。

結核合併例にARTを行う場合は、治療の順序や薬物相互作用、副反応、IRIS(免疫再構築症候群)による結核の発症に注意をする必要がある

 

HIV感染者の結核

・活動性結核があれば、直ちに治療。標準的な結核治療法に準ずるが、治療期間が長くなることがある。(レジメン:RFP・RBT/INH/PZA/EB)

・ただし、薬物相互作用がある。RFPはPI、NNRTIの血中濃度を下げるので、併用禁忌。RBTは薬物相互作用が軽いので、代替薬として使用できるが、用量調整が必要。

RFP併用が推奨されない薬剤

 PI/r、EVG/COBI(ゲンボイヤ)、RPV(エジュラント)

・EACS guidelineにおける推奨ART

第一選択: RAL(アイセントレス)+TDF/FTC(ツルバダ)またはEFV(ストックリン)+TDF/FTC

第二選択:PI/r +リファブチンまたはDTG(テビケイ)+TDF/FTC

 

結核合併症例に対するART開始時期

・抗結核療法開始後は、早期のARTによりIRISを合併しやすいので、治療開始を同時に始めることは推奨されない。

・DHHSのguidelineでは下記のようにされている。

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・ただし、活動性結核で症状が重篤な場合は、CD4陽性細胞<50でも2週間以内のART治療により容易にIRISを発症する可能性があるため、2ヶ月程度待ってから治療開始する場合がある。

 

結核のIRIS

結核はIRISとして発症、増悪しやすい疾患の一つで結核治療中にARTを開始した場合に特に多い。重篤でなければNSAIDSの併用で対処できる

・重篤な場合は高用量ステロイド(PSL 1-1.5mg/kg)の併用を検討する。このような場合はARTの一時中断も考慮する。

 

今回学んだセミナーはとても勉強になりました。

明日からまたお仕事頑張ります!

 

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